2018.10.23

コラム

何故今アカデミア在籍者に特化した『研究者スカウトサービス』なのか? テクノブレーンが取り組む意義を問う!!

技術にフォーカスした人財スカウトを提供して25年のテクノブレーン。企業からお預かりした求人情報をもとに、研究者・エンジニアにお声がけするスカウト型のスタイルを取り続けています。基本的には民間企業で就業されている人財をスカウトしていますが、案件によってはアカデミア在籍の研究者にお声がけしてきた実績もあります。そんな中、何故今アカデミア在籍者に特化した『研究者スカウトサービス』専門部署を立ち上げることになったのか?テクノブレーンが考える意義について、同サービスの責任者である山内さんにお聞きしたいと思います。

Q.
まず自己紹介をお願いできますか?

A.
実はテクノブレーンには出戻りになります。東証一部上場の食品メーカーに就職した後、2000年にテクノブレーンに転職してスカウトマンとして従事していました。その後大手派遣会社の紹介事業立ち上げに携わり、2009年から2018年8月まで大学院生の就職支援に特化した人材会社でアカデミア在籍の「博士取得予定者・ポストドクター」の就職支援を行っていました。

Q.
アカデミアにフォーカスしたサービスを始めたきっかけについて教えていただけますか?

A.
ある企業に訪問した際に聞いた話がとても衝撃的だったのです。某学会で研究発表を行った研究者は、翌年学会から姿を消してしまう。その理由は研究発表を聞いた某外資系企業が学会発表した研究者を片っ端からスカウトして採用している。その企業は学会に在籍することを禁じているので、翌年には全員学会にはいなくなってしまう、と言うのです。

もちろん誇張されている部分はあると思いますが、この話を聞いて「日本企業は完全に出遅れてしまっているのではないか!」と勝手に危機感を感じてしまったのです。

Q.
最近、そういった外資系企業のスカウト話は聞きますね

A.
なので、別に誰から問題提起された訳ではなく勝手に、ですね(笑)。私はテクノブレーンに在籍していたのでスカウト行為に関する知識はありました。前職は登録型の人材会社でしたのでスカウト活動は出来なかったのですが、常日頃「アカデミアにいる研究者にこちらからお声がけしたいなぁ」「何故企業はスカウトしないのかなぁ」と思っていました。

それを外資系の企業はさっさと行っていたわけです。日本という舞台で日本企業を差し置いて、です。「やばい、これでは日本企業は競争に負けてしまう。企業側にできない何か理由があるのではないか。エージェントが代理で行った方が良いのではないか」と思ってしまったわけですね。

Q.
ヘッドハンターの血が騒いでしまったというんでしょうか。

A.
そうなんですよ。「俺がやらないと・・・・」って盛り上がってしまいました。

Q.
日本企業はどうして研究者のスカウト活動をしないのでしょうか。ニーズはあるような気がするのですが…

A.
実はその後に調べてみたのですが、日本の一部の大手企業は「学会での講演の後にヘッドハンティング」というような手法ではなくて、違った方法で、所謂「青田買い」は行っているみたいです。そのことを知っていたら、もしかしたら私はテクノブレーンに転職しなかったのかもしれませんね(笑)。「奨学金」に近い制度を活用したり、インターンと組み合わせたり。

今後も様々な方法での「青田買い」は加速していくものと思いますが、どうやら「ヘッドハンティング」するという手法とは違った方向に進んでいくようです。理由はわからないのですが、心情といいますか、文化的な要素も多分にあると思います。まだまだ旧来型のルート、つまり研究室とのつながりで教授に推薦してもらうとか、リクルーター制度であるとか、OBやOG訪問などが一般的な採用活動として継続されています。

Q.
経団連の倫理憲章なども見直されて来ていますし、日本企業独特の横並び的な考え方も、今後は変化が起きそうですね。

A.
そうなんですよ。採用活動に関しての秩序も崩れ始めています。このまま崩壊が止まらずに通年採用という考え方が定着すれば、「博士取得予定者・ポストドクター」の採用を経験者採用として考える企業が増えていくのではないかと思うのです。そうなれば旧来型のルートは時勢に合わなくなるので自然になくなっていくのではないかと思います。一度作られたルールを壊すのはとても大きなエネルギーが必要な訳ですが、今はその条件は整っていると感じています。

Q.
時代の流れが後押ししている感じですね。

A.
ICTの発達を中心とした「第四次産業革命」が加速する中で、今までの事業領域・技術領域の範囲では収まらない企業が増えつつあり、新しいイノベーションを創造していかなければならない時代が待ったなしでやってきています。中長期で掲げた方針が、一つの技術革新ですべて吹き飛んでしまうようなことも今後増えていくことでしょう。

今、そこにある課題を技術力や創造力で今解決しなければならないわけですから、「今どんな研究者を採用しなければならないのか?」、そんな視点での採用活動は増えていくと思います。

Q.
スピード感が必要だということですね。

A.
そうですね。と同時に(ある範囲の中での)多様性も求められているのではないかと思います。ある企業に訪問した際に聞いたのですが、会社のTOPから「毎年同じ研究室から採用するのはなるべく避けるように」と言われたそうなのです。同じ研究室にいる研究者の方々は似たような研究テーマに取り組んでいる可能性が高いですから、「会社の知見が偏らないように」ということのようです。

Q.
先輩が入社した会社を調べて自分も応募する、という動きとは全く逆ですね。

A.
今までの企業は自らが得意としている分野の研究者を継続して採用することで、ある一定の分野での技術力・競争力を保ってきた訳ですが、その考え方も通用しない程スピード感が必要になってくるようになると思います。

Q.
社会情勢の変化が研究者へ及ぼす影響はあるのでしょうか。

A.
一時期声高に言われていました、博士ポスドク問題もその当時とはかなり様相が変ってきています。もともと文系や理系の一部(生物、化学、物理、数学など)の就職事情が問題となっていましたが、機械、電気電子、情報といったような分野では当時から就職難というような状況ではありませんでした。

最近ではデータサイエンティストという職種が脚光を浴びることとなり、生物、化学、物理、数学といったような専攻であっても、データ解析のスキルがあれば、就職先に困るようなことはなくなってきています。生物系のポストドクターのスキル・経験(研究成果)が、保険会社のデータサイエンティストとして評価されるなど、自分自身では思ってもみなかったような分野で自分のスキル・経験(研究成果)が評価されるといったような事例も出てきております。

今までよりも広い専攻分野で企業課題を解決できる可能性のあるスキル・経験(研究成果)を持った「博士取得予定者・ポストドクター」を即戦力として採用したいという企業は今後増えていくことが予想されます。

Q.
そうなってくると「博士取得予定者・ポストドクター」の就職事情は改善されていくと考えて良いのでしょうか。

A.
前述のような時勢の中で、企業に必要とされるスキル・経験(研究成果)を持っているか否かで、大きく二極化していくことでしょう。文系や基礎研究などの分野の「博士取得予定者・ポストドクター」の方々は、従来通り研究で培ったスキルや実績というよりは、博士が持っている基礎能力をアピールしていく就活方法になると思います。一方で企業に即戦力として必要とされる技術スキル・研究成果を持っている「博士取得予定者・ポストドクター」の方々は、今まで歩んできた分野での民間企業就業ができる機会は増えると思います。即戦力として必要とされる「データ解析スキル」といった、研究内容とは離れていても、技術的には即戦力足り得るような例も増えてくるでしょう。

このお話、後編に続きます!

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